でにでに日記

日頃の気づきなどを発信しています。

「ウクライナ戦争は世界をどう変えたのか」書評

ウクライナ戦争は世界をどう変えたのか」を読んだ感想とまとめです。

この本の著者は豊島晋作さんというテレビ東京のニュースキャスターの方で以前は「ワールドビジネスサテライト」のディレクター、現在は「テレ東NEWS」掲載担当や「モーサテ」のキャスターを務めている方です。

豊島晋作

 

ウクライナ戦争は世界をどう変えたのか

21世紀になり大国が軍事力を用い他国を侵略するということがついに起こりました。この戦争が起こった原因、そして世界はそれについてどう考えているのか。また、日本はどうしていけばいいのかそのことについて、著者は書かれています。

ロシアが侵攻した理由

ロシアがウクライナに侵攻した理由はもちろんあります。

  1. ウクライナNATO加盟を防ぐ
  2. ウクライナで虐げられているロシア語系住民の解放
  3. 西側諸国への不信

などです。

ウクライナNATO加盟を防ぐ

NATO (大西洋条約機構)とは
  • 米国と西欧諸国による世界最大の軍事同盟
  • ソビエト連邦と東欧諸国が加盟するWTO (ワルシャワ条約機構)、共産主義に対抗するために発足
  • 加盟国に対する第三国の攻撃に対して互いに防衛する集団安全保障システムを有する同盟

現在WTOは解体しているが、ロシア包囲網としてNATOは継続して組織されていて、ロシアは脅威を感じている。

 

ウクライナは加盟しようとしていて、もし加盟するとなったら、ロシアはウクライナと面する長い国境線を警備しなければならなくなり、なんとか阻止したいと考えている。

 

それにロシアとしてはソ連崩壊の後、なぜNATOを継続し拡大するのか不満がある。

NATOがロシアを脅かしている以上、自衛力を高めるのは仕方がないという考えがロシア国民(特に戦争経験のある高齢者)に支持されている。

ウクライナで虐げられているロシア語系住民の解放

プーチンの考えではウクライナはロシアの一部である。ウクライナ東部にはロシア人が多く住み、彼らがナチスの残存兵力・ウクライナに虐げられているとういうため解放しなければならないという理屈だそうだ。

 

ナチスからの解放というのはウクライナにはナチスの残存兵力が支配しているという考えからくるもので、第二次世界大戦独ソ戦ウクライナは地理的な理由もあり、ソ連とドイツがぶつかるところであった。

 

ウクライナにはソ連と一緒に戦う人々とドイツと一緒に戦う人々がいました。そのためプーチンはそのような考えになったと思われます。

独ソ戦ソ連が勝利しました。これはソ連ナチスの脅威からヨーロッパを救ったというロシア人にとってとても意味のある戦いでロシアでは大祖国戦争と言われている。

 

私見多くのロシア人が住んでいるからロシアの一部だというのは私には暴論のような気がします…。もし日本に他国の人が多く移住してきたら(もうしているのかもしれないが)、そこは日本ではなくなるのだろうか。そんなことはまかり通っていいはずがない。ただ、自らの利益のため一部の勢力に迎合する政治家が世界各国にいるのは事実だと思います。

西側諸国への不信

度重なるロシアへの西側諸国の対応に日に日に不信感を募らせていったのが原因。

  1. 干渉戦争
  2. NATO拡大
  3. ウクライナの親欧米政権樹立を支援した疑い
干渉戦争

干渉戦争はロシアが十月革命により共産主義に動いたことを脅威に感じた資本主義国陣営が反革命運動(白軍)を支持し派兵した戦争。

NATOの拡大

ソ連WTOが解体する時、ゴルバチョフNATOの拡大、もしくは東欧国を引き入れないこと(NATO勢力が直接ロシアに接することになるため)を要請したが、約束を反故された。

・当時の米国ベーカー国務長官は「NATOの範囲は1インチも東に拡大しない」と発言していた。

NATO不拡大の拘束力のある外交文書は存在していない。

ウクライナの親欧米政権樹立を支援した疑い

2004年親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチが就任するが、選挙の不正があったとして、退任させられ、親欧派ヴィクトル・ユシチェンコが就任。(オレンジ革命

直後にNATO加盟を目指すと発言 ← プーチンは西側諸国の策謀だと考えた。

 

2010年ヤヌコーヴィチが再び大統領就任したが、2014年市民が蜂起し、大統領はモスクワに亡命することになった。(ユーロマイダン革命) ← プーチンアメリカを疑う。

 

以上のことから、ロシア欧米との友好は無駄だと考えるようになった。

NATOの論理

2022.6.22 NATO首脳会議でロシアは最大の脅威とした。しかし、ウクライナ戦争には直接参加しないと考えられる。理由としては、

  1. ウクライナNATO加盟国ではない。
  2. NATO対ロシアの核保有国同志の全面戦争は避けたい。

以上のことから武器・情報提供にとどめている。

NATO拡大の理由

  1. アメリカはロシア民主化のため数十億ドル投入したが、プーチン独裁体制になった。→ ソ連解体時、NATO拡大しないとしてたこと。イラク戦争アメリカが大量破壊兵器を所持しないイラクを攻撃したことで欧米に友好的だったプーチンが非友好的になったことなど、どちらの主張が正しいのかはわからない。
  2. 東欧諸国は自主的にNATO加盟した。→ ソ連との苦い経験と恐怖がある。ロシアが民主化することは難しいと考えた。(ロシアは数回民主化しようとしたが、その度に国内が混乱した。その経験があるロシアの高齢者は混乱の恐怖より独裁を求める。)

西側の本音

ダボス会議世界経済フォーラム)でキッシンジャー元米国国務長官が戦争終結には領土分割(東部ドンバス地域)はやむを得ないと発言。→ゼレンスキー大統領(ウクライナ)は猛反発した。

NATO内でも意見は分かれていて、

  • ドイツ・イタリア・フランスは妥協を求めている。→経済のつながりが強いため
  • バルト三国は妥協に反対→ 次は自国が狙われる恐れがある。
  • イギリスも妥協に反対→ 国内に亡命してきたスパイがロシアに殺害されたためロシアとの関係が悪い。

   

妥協した後の考えられるシナリオ

 ロシアに対して、領地一部割譲の前例を作ると、中国など独裁国家が台湾に攻め込んだ際、最終的に領土の一部割譲を認めることになる。ロシアはよくて、中国はよくないということは認められないからです。

私見:この状態で一番利益を上げているのは軍事産業に関わる人たちではないだろうか。もし戦争が続けば、ウクライナに兵器を売ることができる。

 

しかし、領土割譲という形で戦争が終われば、中国が台湾に攻め込むのを躊躇する理由がなくなり台中戦争が始まる可能性が高まる。そうなれば、また兵器が売れる。

 

現在の状況に踏み入ってしまった以上、ロシアが領土を諦めるくらい追い詰めなければ、中国が台湾に攻め込むことになると考えられる。ただ、そうするには長い時間を要すると思われる。つまり、また兵器が売れる。どう転んでも軍事産業に関わる人たちが儲かる仕組みになっているのではないだろうか。そこまで考えて、国の中枢を唆せていたとしたら、仕組まれた戦争だとしたらと不意に思い、恐ろしく感じた。

 

アフリカから見た西ヨーロッパ・ロシア

ケニア国連大使のマーティン・キマニが西洋諸国に勝手に国境線を引かれたアフリカの立場として、ドネツク・ルハンシク州の一方的な独立を認めたプーチンを強く非難した。

 

その後、国連の緊急特別会合でロシアのウクライナ即時撤退を求める決議が行われた。

結果は賛成141、反対5、棄権35、不参加12

ただ、反対のうち1カ国、棄権のうち17カ国、不参加のうち8カ国の計26カ国がアフリカで、

アフリカ54カ国のうち約半数がロシア即時撤退に賛成に票を投じなかった。

 

さらにロシアの理事国資格停止の決議では44カ国(54カ国中)が賛成しなかった。

反ロシアではない理由

  1. 第二次世界大戦後、アフリカ独立の支援をしたのがソ連である。
  2. アパルトヘイト(人種隔離政策)打倒のためロシアはANC(アフリカ民主会議)を支援してくれた。
  3. 西側諸国は自由・民主主義を掲げているが、奴隷貿易などでアフリカの人権を踏み躙ってきた。
  4. ソ連の支援で独立しようとしてきた時、アメリカ合衆国は邪魔してきた。

以下のことからアフリカ諸国は西側諸国に対する不信感がある。

 

感想

 ウクライナ戦争は急に始まったかのように思っていたが、実際には過去から積み上げてきた不満や不信感・恐怖が最後にこのような形になったのだと分かった。また、ウクライナとロシアの歴史のようでもあるがソ連(ロシア)とNATO(西側諸国)の歴史から起こった戦争のように考えた方がしっくりくるような気がする。

 もちろん、ソ連・ロシアの行いから不満を持った国々が出てきてNATO加盟という自業自得な結果になった面もあるが、アフリカの主張など決して西側諸国が今まで褒められるようなことをしてきたわけではないということもわかった。現在日本に住んでいる以上、西側諸国に偏った情報が入ってくるということを踏まえその上で自分で納得する情報を取捨選択しなければ、ならないのだと思わされた。

 そして、北朝鮮、中国、ロシアという独裁国家に囲まれた日本で平和を維持するためには日々の積み重ねによる関係。そして、軍事力と法整備をすることで相手国に侵攻される前に侵攻に対する不利益の大きさを理解させなければならないということを本書に教えられた。

古代ローマの格言「汝、平和を欲するならば、戦に備えよ。」まさしくその通りだ。